高尾城の裏手には往時の砦のような城塞が数多く点在するらしいが素人目には全く判別はし難い。
此の高尾城塞群のはずれには坪野・清瀬・平栗らの村落が取り巻いている。
林道を走らせ平栗いこいの森のカタクリ群生地を目指した。
生憎、あの時期はまだちらほら目にする程度でしかなかった。
車窓より微かに萌えいずる梢の新緑を愛でたり道端に顔を出すフキノトウを採取しながら鶏小屋のやっさんと一緒に早春を満喫したのです。
とある箇所の山側斜面に淑やかに清楚な姿で佇む山野草が目に入る。
悪いと知りながらも一言断わってから二三株を失敬してしまった。
帰って図鑑を開くがどうしても名前がわからない。
止む無く翌日には自然史資料館へ持ち込み尋ねてみればいとも簡単に一瞥するなり「キクザキイチゲ」ですと即答を戴きました。
成る程、菊の花弁に似ている又一輪草の名前の通り一本の茎に一輪だけ咲いている。
群れることより孤高を好むところが何より魅力的だ。
さらに加えて、この植物はSpring Ephemeralと呼ばれ春に咲く束の間の儚い命を意味するのだと教えられ猶の事愛着心が沸々と湧きいずる。
やがて夏が近づけば花は萎み葉もやがては消え去るが地下茎だけが命を長らえるのだと説明はつづく。
夏になってもお水だけは忘れぬようにと優しく諭されたのです。