老いのひとこと

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本庶先生の受賞が10年先であれば弟鉄二の命も救われていたかも知れないと思えば遣る瀬無い。


ガン細胞を排除する免疫力を高める此のお薬の登場が若しや10年早ければと敵わぬ愚痴をこぼして見たくもなろう。


弟が逝って8年目がやってくる。


今以って弟が身に着けていたお古を愛用する。


夏には黒とえんじの半袖ポロシャツを使い分け、春と秋の間の季節には黄色と濃紺の長袖を平気で着こなす。


弟は石の地蔵さんを彫って遺して逝った。


その弟が愛用した各種鑿一式も譲り受けた。


満を持して我が終生のライフワークたる木彫り仏に取り掛からねばなるまい。


もうそろそろ発意しなければ時がない。


先ずは鑿の刃の目立てから遣らねばなるまいと弟鉄二が背後から盛んに嗾けてくる。


秋がだんだん深まるようだ。