拍子木を打ちながら川沿いを行けば夜釣りに興ずる人あり。
恐らくは工大生だろうと覗き込めば魚類ではない、第一こんな浅瀬に魚が居るはずがない。
何んと驚く勿れ彼は釣竿の先の網でゴミのような汚物を掬い上げているではないか。
今時稀にみる優れた心掛けに感服すること頻りだ。
サークル活動の一環かと尋ねれば単独行動だと云う。
何回生かと聞けば1年生だと云う。
此の町内に住むのか聞けば違うと云う。
ゴミ曝いの邪魔にならぬように話し合う内に此の六尺近い大男は何と中学1年生であることを知り魂消てしまった。
薄暗い中容貌まで読み取れなかった。
これぞ、今時実に稀有なる中学生だ。
こんなに物凄い人物に出逢えてわたしの気持ちが急に明るくなった。
善行表彰ものだと思ったがそんな野暮なことを口にしたら失礼なので躊躇った。