久麻加夫都阿良加志比古神社の凄まじき忿怒相の神像を見飽きることもなく只じっと眺める。
此の寄り付き難き物凄い形相に魅せられた。
わたしは此の神像の虜になってしまった。
得体知れぬ此の魔物の中にわたしは自ずと足を踏み入れ閉じ込められている。
此れぞまさに天に御座す閻魔さまの実像ではあるまいか。
予てより追い求めしわたしの心頼みであり命の拠り所が此の神像の中に凝縮しているのです。
慈悲深き仏の像ではなく敢えて怒りの権化のような神像におのれを投影する。
おのれが神像に映る。
神像の中におのれがいる。
神像がおのれでありおのれが神像になった。
恐怖や怯え、戦慄き、不信や猜疑をも包含する忿怒相の神像からは何故かしら怒りを超越した和みと安らぎを見い出すのです。