老いのひとこと

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居間に古びた茶棚がある。

義母からの形見分けの品になる。

時代物ながら茶器の類は入っていないに等しい。

ラクタ物の倉庫に過ぎないがわたしにはなくてはならない存在でもある。

引き戸の中は茶器には非ざる酒器の数々が格納される。

愛蔵した盃と徳利はみな思い出の品だが名品と名の付くものは一つもない。

捨てるわけにはいかぬので引き戸の中に眠らせる。

つまり今や正月以外には使うことが無くなった。

滅多と開けない開かずの引き戸ではあるがつい先日のこと、無理をして開けようとすれば引き戸の一枚が分解してしまった。

縁に出て軟らかい日差しを浴びながら四本の桟を戸板に嵌め込む作業に打ち込む。

無心で打ち込む。

でも、どうしても旨くいかなかった。

空気がはっしゃぐ所為で反りが生じたらしい、最後の四本目の立桟を木槌で打ち込めばバラバラと砕ける。

鋸と小刀と紙ヤスリで接着面を削って調整するがそれでもダメだった。

性根尽き果てたが癇癪玉は落ちることはなかった。

巧くいかなかったがぽかぽかと日向ぼっこしながら一点に集中できたことは喜ばしいことだった。

少々寂しいが開かずの引き戸のまま盃ともども当分は温存いたすことに致しましょう。

見て見ぬ振りをするのも修行の一つでしょう。

人生諦めが大事です。