家に茶棚があるが家内の嫁入り道具ではない。
家内の母からの形見分けになる。
茶柿の天然木をふんだんに用いた百年以上の時代物に違いない。
今や在って当たり前の顔をしてわが居間にでんと居座る。
此の茶棚には茶道具は愚か只のガラクタしか入ってはいないのだがどうしたことか戸棚の木枠が外れて分解してしまった。
相当の年季ものなのでニカワがはっしゃいだのだろう。
ところがどうしたことか素人目ではあるが膠の跡らしき痕跡が見当たらない。
木目の木地がそのままほぞがほぞ穴に寸分たがわず嵌め込まれているだけではないか。
木工技士の職人技に只々驚嘆する。
其処まで吟味して小細工の一部分を目の当たりにした事はなかった。
藩政期の間培われた加賀百万石の職人魂が未だに脈々と活き耐えて令和の時代にまでも生き永らえるのかと思えば荘厳な気にさせられる。
高が茶棚然れども茶棚で我が家の自慢の伝統工芸品なのです。