老いのひとこと④

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      無断掲載

わたしの母方の祖母重ばあさんから大昔に舅に当たる近吾の長男辰太郎の話をそれとなく聞いたことを薄ぼんやりと思い出す。

わたしにすればあまり興味のないことなので漫然と聞き流していた。

口癖のように自分の夫の兄が津田家の身上を潰したことを随分口説いていたのだが肝心かなめの具体的な事例については思い出せない。

これは実に残念至極だ。

明治元年生まれの辰太郎は昭和15年に72歳の生涯を終えるのだが死亡届を出すのが親族以外の人物で在ったことからすれば何か在ったのだろう。

一族全員が除籍され日本国籍は抹消されたのです。

 

そしてもう一方津田近三なる人物のその後の消息を知りたい。

津田家一族とは縁遠き端くれながら其れを解明いたすべく戸籍課に一談判を試みたが

機密保全に金縛りの役所からは門前払いを喰らうだけでした。

一幽近光から平太夫近智へと流れた津田本家の血筋は和三郎近知の養子十之進と近三の御両人ともに此の世から消息を絶った。

津田本家のお家断絶の存否を詳らかに為さねばならない。

それが今に生きる者の勤めで在らねばならない。

 

辰太郎、十之進、近三の此の三者明治初期の同時代に生き恐らくは気心知れ合う間柄で

あろう。

何を語り合いどのような夢を互いに話し合ったものか知る術なくとも何んとしても口惜しい。

明治維新の荒波に呑み込まれ海のもずくと消え去ったのでしょうか。

彼の方々の菩提寺は妙典寺に違いがない。

確かに近三は養父和三郎近知を半山と崇め懇ろに祀ったし此の妙典寺にて葬られた。

しかし、辰太郎も十之進も加えて伴四郎も其処には位牌、墓石は元より葬られた痕跡すらない。

未だ成仏にいたらず亡霊が闇を漂うのです。

此れ如何が為すべきでしょうか。

吾れ何を為すべきでしょうか。