わたしはしがなき又小作人です。
農具はスコップとちゃちなアルミ製三角鍬一本のみの零細耕作人です。
支柱すら持ち合わせがない。
処が実はお隣さんは耕作放棄のまま耕地にはビニールシートを敷き其の上に石ころや支柱の類が無造作に置きっ放しの状態にある。
或る日の事、筆頭小作人のOさんに断りを入れて了解を貰った。
此の時点でわたしの判断が極めて甘かった事を反省する。
肝心かなめの耕作放棄人の了解を得ぬまま勝手に借用してしまったのです。
ところが其の翌日なって何となく気が咎めたので其の御方の実家へ赴き其の旨申し入れをしたのだが危惧した通りけんもほろろに冷酷なる反応が返ってきたのです。
他人の物を無断で勝手に使うなんて以ての外盗っ人同然ではないかと言葉こそそんなに荒々しくは無いにしても嫌味たっぷりの返答でした。
わたしは大きなこころの痛手を被った。
ばつの悪い表情で其の場を退散したのでした。
即刻その足で現場へ赴き借用に及びし支柱を元の持ち主へお返し申した。
思惑通りに事が運ばなかったのは先方さんは関係がない全て此のわたくしのせこい魂胆が悪いのです。
新品調達ではなく古い竹竿を有効に活用してやってみよう。