老いのひとこと

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不愛想なポチに口笛吹いて挨拶を交わし馬替の街外れに差し掛かるとほのかに甘い香り包まれてつい足元が吸い寄せられる。

「くさき」じゃなかろうかと図鑑を開けば「くさぎ」との間違いに気付かされた。

純白の四枚の花弁が十字形に開き長い雄蕊の中に一際長い雌蕊が一本垂れる。

白いじゅうたんを広げたように群がり咲く、そして芳醇で魅惑的な匂いが辺り一面に充満する。

ところが生と死、美と醜、善と悪とが恰も表裏一体の間柄ならば此の「くさぎ」も「臭木」と書くごとく葉っぱの異臭には二律背反の関係が見事に成り立つのです。

ゆえになるべく葉には近寄らないように気を遣う。

季節の移ろいに準じて「くさぎ」の芳香も萎え花びらも萎んで初秋の頃のあの面影は今はもうない。

それに引き換え柘榴の実が日毎に色付き始める。

やがて柘榴色がぽっかり開き露わに剥き出しになる日が楽しみなのだ。