老いのひとこと

 

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わたしに与えられた制限時間と云おうか持ち時間は10時から12時までの正味2時間しかない。

其の間に先週の忘れ物処理つまり底に付いた釉薬の拭い落とし作業を為さねばならない。

予め吸水スポンジと濡れ雑巾を準備したので難なく熟せた・

次いで高台がない6点分の底にテープの張り付け作業に取り掛かる。

時計の針はお構いなしに進むばかり。

次はお目当ての陶板二枚に「弁柄」と「呉須」にて薄化粧を施す。

此れぞまさに「急いては事を仕損じる」を肝に銘じて慣れない手付きで事に当たる。

顔料を溶く水加減のことや用いる筆の太さ加減のことやあれやこれやと気焦れども捗々しくは事進まず。

時計の針は既に11時を優に回る。

此れではダメだと観念した其の時、救いの手が差し伸べられたのです。

初対面で名前すら存じ上げない御方から宜しければお手伝いいたしましょうかと色々アドバイスやサゼッションを授けてくださったのです。

遂には作品ごとの釉薬の選別までも、そして釉薬を掛ける分までご助力を頂戴してしまった。

時計は12時を回る。

漸くにして悪戦苦闘の長丁場を終えた。

陶芸に精通なされる其のお方の芳名を問い質そうとしたが既にお姿を見失っていた。

辛うじて、12点の拙作に見事釉薬が施され目出度くノルマを果たし得たことになる。