老いのひとこと

家の前の川向こうの校門脇に二本の楠がそそり立つ。

いつものコースの終着点で青空を背景に此の木の小梢の葉擦れを微かに聴いたりもする。

何んと云っても此の時季の衣変えの妙技には見惚れてしまう。

生憎色弱の身ゆえ紅葉は見逃さざるを得ないが季節外れの落葉には驚きこころ奪われる。

また紅緑入れ替わりの早業にも眼は奪われる。

 

其れを見届けるだけの眼力も洞察力も識別力も此のわたしには無いが何時の間にか新緑に移り変わった此の楠の小梢を青空を背景に暫し見惚れて佇む。

何でもないようなことにわたしは安堵感をいただく。