老いのひとこと

物置横の猫の額ほどの空閑地にヒマワリの種を蒔いた。

あたかも一家の家族たちが寄り添うように支え合うように今真夏の太陽を精いっぱい享受している。

狭い住処に互いに密集し密接に関わり合いながら懸命に生きています。

灼熱の暑さを厭わず太陽に正対しそのエネルギーを貪欲にむさぼる姿は何としても神々しい。

 

終戦間もない頃、野村練兵所跡地の一角に俄か作りの校舎と運動場が出現し此処が我らが学び舎野田中となった。

今でも忘れはしない国旗掲揚ポール前の壇上には兵隊帽姿で頬がこけた眼光鋭き古武士のような竹澤喜太郎校長が立って張りある声を響き渡らせる。

必ずやひまわり健児を讃美し、ひまわりのように明るく力強くあれと訓示を垂れるのが常であった。

 

あれから七十余年の歳月が流れ今そのひまわりの花を前にして感慨深く往時を思い返す。

 

竹澤校長の声が、最早聞こえなくなってしまったわたしの耳にもちゃんと其の情景は今も甦る。