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体操競技に内村選手あれば剣道競技にも内村ありと云えまいか。
共に日本のお家芸には違いなかろうが航平選手は茶の間のテレビにはお馴染み深い人物、ところが良一選手はあまり馴染はなさそうだが如何にも古武士然としたあの風貌は一度目にしたら忘れることはない。
テレビの解説では38歳と紹介していたがあの風格は五十代にも引けを取らない。
細目で優しさを湛えているが一たび道場に立つ面金越しのあの眼差したるや正に豹変し鋭き眼光が宙を睨む。
NHKのカメラマンは躊躇なくそれを捉えてくれた。
面金の奥に光る内村選手の冷徹なる勝負の眼を的確に映し出してくれていた。
一本目を先に取られても四戒をいましめ沈着冷静に好機を待つ濃縮されたあの瞬間は見ていて堪らなく実に素晴らしい。
此の老輩は今足を病んで呻吟する。
取り分け左の踵が気になり気を揉む。
それ故に各選手諸君の足捌き特に左足の捌きを注視しつづけた。
試合中ただの一瞬たりとも左踵を着床する所作を見せなかったのはやはり内村良一選手只一人で在りました。
此れは只者ではないことをまざまざと見せつけられたことになる。
終始一貫左踵は上がっていた、それも上がり過ぎの嫌いすらあった。
何せ170センチの小兵には相手を見下ろす気勢を示さんが為には番止むを得まい。
瞬間たりとも居着く動作を戒めた何よりの証左でありましょう。
勝負に臨む美しい執念を垣間見たのです。
更にもう一つ内村選手の逆胴に入った竹刀をものの見事に抜き放しそして抜かりなく立派な残心姿勢で締め括られた。
また小手に行き体を開いて剣尖咽頭部に付け見応えある残心を示された。
これぞまさに日本剣道、超ベテランでも基本に忠実なる素晴らしき内村剣士よ、巷間耳にする醜聞をも両断し逸早く払拭されますよう更なるご精進に期待したい。