老いのひとこと

風がないむしむしし顔が火照る、息切れし足元重く自由が利かない。

道場の隅っこを歩く、早や足を試みるがままならず歩幅を広める気力失い其の場に立ち竦む。

動悸がし目元定まらず、その時観念した。

此れはヤバイ、稽古の断念を決意した。

暫し其の場に転がり様子を静観する。

幹事にその旨告げ稽古の邪魔を避けながら防具を引きずり道場口にて正面に向きを変え退席の挨拶を為さんと佇めばお一人の剣士が動きを一瞬止め当方に軽く会釈を交す仕草に一瞬たじろぐ。

見るまでもなく塾頭ではないか教士七段の熟練の域に在りながらおのれの稽古を中断して当方に返礼を返す。

剣技のみならず人間道にも精通せしそのお姿には自ずと頭が下がった。