老いのひとこと

拙いあばら家の庭園は見るも無残なる雑草園と化して久しい。

何年かむかしのこと、藤井さんの断りなしに何の気なしに「女竹」の根っ子を植えて仕舞ったのが運の尽きと云えよう。

「植えるのなら大鉢に植えそのまま地中に埋め込みなさい」との御忠告があったであろうが取り返しの付かぬ失敗を演じたわけだ。

数年も経たぬうちに雑草園に輪を掛けるように嘲り笑うように所かまわず顔を出す。

斬っても踏んでも年年歳歳初夏を目指してお出ましだ、地中に根を張り縦横無碍に蔓延りあがる。

最早、人力の及ばぬ魔物と化した此の「女竹」・「スギナ」・「貧乏カズラ」を宿念の眼の敵と致すのだ。

此れは「破竹の勢い」とは申さぬが今年は何んと車庫の中にお出ましだ、ブリキのトタンの隙間からのうのうと厚かましくも厚顔無恥振りを見事に発揮し居る。