老いぼれへぼ教師の回想記《57》

イメージ 1
“デモシカ教師”を自認するものにとっては、あの職員室の雰囲気は異質に映った。
恐ろしいばかりの闘志を秘めたやる気満々の聖職者の面々がひかえていた。
教育の粋を極めんと知性と理性に溢れた眼で宙を睨み付けていた。
みなが皆、生まれた時から教師道に血眼になって生きている生き物に見えた。
“デモシカ”さんにとっては、おかっないという印象を強くもった。
 
 
その五 挑戦と試練挫折の河北台(5)
 
 
士族の商法=その5   
  
 石川県立河北台商業高等学校の商業科教諭を拝命した。 
 少々仰々しいが高鳴る胸の鼓動を大いに意識しながら内灘砂丘の高きに聳える白亜の校舎を目指した。
 校長は今井一良先生であった。柔和で温厚さを漂わす学者肌の好人物に映った。
鳴中での同僚今井知愛氏のご尊父であられた。
ここでも、社会科ではなく商業科担当を再確認された訳だ。
 高校はやはり人的構成のスケールが違う。職員室の中も随分格式ばった重厚な雰囲気で中学校からの新参者にとっては容易に受け入れ難いアカデミックなカーテンに囲まれていた。
とにかく息苦しい閉塞感すら味わった。
当たり前なことだが周囲には顔見知りはもとより知己とおぼしき人物とて一人もいなかった。
もともと適応力に乏しい生立ちなるが故に防禦の姿勢を固めて一方的にガードするだけで外に向かっておのれをアピールし自己主張する攻めの気勢はまったくといって良いほど萎えてしまっていた。