うらなりの記《65》

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穴水町中居の旧家を誇る河原家は海沿いに建つ大きなお屋敷であった。
二階の大広間に通された。潮風が通り抜けていた。
いつの間にか、最上座の雛壇に飾られていた。
当家の遠縁の方々も一堂に会してご臨席に及んだ。
余りにも多勢に圧倒され肝をつぶされたことを忘れない。
 
 
 
その六  高橋家の相続(4) 
  
私には、とりわけほろ苦い思い出として、 穴水町 中居の義母ミサオの実家へ招聘されたときのことを思い出す。  
河原家一族の面々が大広間に大挙して出迎えて呉れて、盛大なる歓待の持て成しを受けたことがある。
並居る先ぽう方ののお歴々からの熱い視線と異様なる気遣い心遣いが痛いほど胸中に突き刺さった。
先方からの懐柔策を全身に意識した。私は柔軟性を欠いてしまっていた。
私の心中は硬直したままであった。この上なく気難しき存在として先ぽう方に映ったに相違ない。