うらなりの記《66》

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海沿いの国道249号線を走ると随所に観光用のボラ待ち漁櫓を見受ける。
江戸時代からの伝統漁法で、日本国中ここだけにしか見られないとても珍しい光景である。
こちらでは、メナダとは呼ばず赤目ボラという。こいつは、いただけない。野良猫やカラスでさえそっぽを向くらしい。
これは、何と言えど此処能登の美しい海の白目でなくてはいけない。
清水で洗ったボラの切り身は歯触り能く鯛以上の珍味であった。
一方、穴水町の背後に重なり合う二子山の小高い山々へ分け入ったことがある。
カッパと称するキノコを採集したことがある。
通称、フロシキというらしくまるで風呂敷を広げたように辺り一面に群生していた。
 イシルという魚醤に漬けるとこれまた絶好の珍味となる。
 
その六 高橋家の相続(5)
  
 ただ、その酒宴の折に振る舞われた捕獲されたばかりの白目ボラの洗いの刺身とカッパと称するキノコのゐ汁漬けの珍味は忘れ難く記憶に残るのである。
 それでも、河原家との融合のためにはいかなる犠牲をも惜しまぬ決意と覚悟は私なりに持ち合わせていたはずなのだが、如何ともし難き程に実母としへの愛惜と哀惜の念が入り乱れ余りにも強烈であったが故に心のなかの想いとは裏腹に表面に出る言動は継母ミサオの心中を傷つけミサオの気持ちを逆撫でするばかりであった。
今改めて、悔悟の念に苛まれるのでる。