当家の当主三男利治に再度ダメを押さねばなるまい。
墓場の陰で、鉄二はにっこり笑いながら“今更そんな水臭いとは言わずに兄貴が大切に保管するこっちゃいね”とも言っていそうだ。
然すれば、つぎにはわたしのつぎなる後釜を遺言しなくてはならない羽目に陥ることになる。
その七 友重(5)
それ故に誰がこの『友重』を保持し維持管理し、そして継承して行くかが大きな問題であり繰り返し述べるように三人で篤と話し合わねばならないことだと常日頃そう思っていた矢先に、次男鉄二が敢え無く急逝してしまった。
鉄二の生前において、三人による確約をかわしておくべきであったなあ。
よし、善は急げだ。一本引っ提げて利治と一献傾けることにしよう。
簡単なことではありませんか。