老いぼれへぼ剣士の夕雲考《80》

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干戈(カンか)-盾(たて)と矛(ほこ)のこと
 
夕雲流剣術書         小出切一雲 誌(6)
 
 
④ 【近代八九十年此方、世上は靜謐となり干戈自らやみ、天下の武士共安閑に居眠りする樣に成り行て、戰場に臨で直ちに試み習ふべき樣なければ、責めては心知る良友に相對して互の了簡を合はせ、勝理の多く、負る理の少なき方を詮議して勤習すること、】
 
口語訳
 
  ここ最近の八十年間ないし九十年間というものは、世の中はまるっきり平穏 ( へいおん )なる太平の世になってしまったではないか。
干戈 (かんか)と称した ( たて ) ( ほこ )などの武器を用いての争い事はほとんど聞かなくなってしまったわけだ。
 そうすると、天下の武士たちは安閑 ( あんかん )として居眠りする有様でどうにも始末に負えないのである。
 そこで武士たちは戦場に臨んで、その場で斬り合いを試みる機会がないものだから、せめて気心知れた仲間同士が相対戦し、互いに打太刀と仕太刀の約束の下で立会い、両者の内勝つ理由が多く負ける理由が少ない方を互いに相談して決めるというやり方で稽古の方法を編み出していったのであります。