雑草園顛末記《1》

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                            キンタの墓
 
草むしりとキンタの墓
 
 草むらに覆われていたキンタのお墓が現れた。
 十年以上も以前のそのころ孫と同居していた。
 背戸の手水鉢で金魚を飼っていた。
 孫がお祭りの夜店で貰った二三センチの赤い金魚であった。
 よく世話をしてくれた。慣れ親しんだ頃に孫はキンタと名付けてくれた。
 冬の間雪で覆われて給餌なしでも二冬生命を保持した。
 孫同様に、キンタも元気に逞しく成長した。
 ところが、ある夏の昼下がりキンタは無惨にも水面に浮いてしまった。
 鉢に軽い振動を与えるとキンタは餌を催促して水面に顔をだし小さなお口をパクパクさせていた可愛いしぐさももう見ることはできない。
 可哀想だね。寂しいね。孫はキンタのお墓を提案してくれた。
 一緒に作り、そして建てた。
 あの日から十年の歳月が流れた。
 孫と一緒に、この墓に手を合わせた昔のことを思い返した。