老いぼれの弓事始め《5》

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弓事始め
 
③ 姿勢
 
 執り弓の姿勢がある。習い立ての頃、執り弓の姿勢で真っ直ぐに立ちなさいとよく言われた。
 自分では素直な気持ちで真っ直ぐに立てっているつもりなのだが、先生方からはもっと素直な気持ちで以って言われた通り真っ直ぐに立ちなさいと叱責されてしまう始末・・・
 鏡の前でよくよく見れば、微妙なところで少し右に傾いている。
意識して矯正すれば、なるほど真っ直ぐになっている。
 その気になれば、ちゃんと真っ直ぐになれたようだ。
 ところが、再びやってみればまた同じように傾いてしまうのである。
 わたしは、どう見ても身も心も捻じ曲がった (ひね)くれ者となってしまっている。
 予てより、 (じき) (しん)に徹しおのれ自身がそのように為らぬよう懸念もし留意もしてきたつもりだが、やっぱり駄目だったのか自己嫌悪にさえ陥る始末なのです。
 
 しかし、よくよく考えてみれば下手糞な老いぼれ剣士が明けても暮れても年がら年中棒振り剣法と、竹刀振りの職人さんになってしまったようなので、恐らくこれが影響したのかもしれない。
 右手が前方の半身の構えではあるが、腰骨や臍は真っ直ぐに相手に正対する。
 確かに、此の不自然な姿勢のしわざであろう。
 おのれに言い聞かせ納得させている。
右肩を退き左の腰を入れてみることにしよう。
 守破離の守に徹し、初心忘れずをモットーにしなくてはいけない。
 
 今朝の朝刊に県下一の老練な射手の記事があった。
 我が心身を制御するだけでも大事なのに見事的を射て優勝されるとは確かにただ事ではない。
 立禅の世界であり無の境地なのだとおっしゃっている。
 同じく九十四歳まで面を被られた松岡源七剣士の直向きなお姿と重なり合った。