老いぼれの愛犬日記《11》

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                   擬似ウンチングスタイル
 
11 排便の事
 
 元気な頃のこの犬は、羨ましいくらい巨大なフンを仕出かす奴だった。
 兎に角小さな身体の割には、よくもこんなにと感心せざるを得ない。
 それも、時によっては朝晩二回もしおる始末だ。
 ところが更に排便直後に数メートル歩いて再びしゃがみ込んで二回目をしあがる。
 これには、飼い主とて黙ってはいられない。
“この馬鹿者め”と怒りの感情を露わにすると犬なりに感じる処があるらしい素振りを示す。
“いや旦那さん。すんませんね”と言わんばかりの顔つきで上目づかいにこちらを見上げる。
 この仕草が何とも云えないのだ。
 或る時本気で大声を出した時があった。 
 そしたらそれ以来、この犬君は二回目を仕出かしてもしゃがんだままジーと動こうとはしない。
 ウンチをしたくせに何もしてませんよ、という仕草なのです
“飼い主さんのお小言頂戴はいやですよ”と無言の抵抗をしおる。
 その時の目付きがまた一種異様な可愛げな目なのです。
 変わった犬に変わった飼い主の話しなのです。
 
 ところが、いまやそのうんちが出ない。一週間以上の長きに渡り続いている。
 傍目に辛いが、医師は大丈夫ねすよと、素っ気がない。
 それが数日前に摂るものも摂らず伏したままの身にもかからわず人も羨むほどの巨大なヤツをしおった。
 でも、この束の間の喜びも終にはぬか喜びに過ぎなかったのです。
 この一時の歓喜が余りのも大きかったので、その反動として跳ね返ってきたのが最悪の事態であった。
この悲嘆が余りにも大き過ぎた、りりは帰らぬイヌとなってしまった。