うらなりの記《101》

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⑦ 私は母に近づいた。母にはタオルケットが掛けられていた。
まさに文字通り薄っぺらなタオルケット一枚だけが見えた。
母のふくよかな五体はどこにもなかった。
余りにも無惨と言おうか無慈悲すぎる光景だった。
目だけは変わらぬ母の目であった。優しい目であった。
慈悲に満ち溢れたほとけの目であった。
よく来たね、待っていたよと母の目が語ってくれた。
間違いなく薄い笑みを湛えていた。