うらなりの記《114》

イメージ 1
 
 
⑳母との京都案内への夢も破れさってしまった。
何もかも叶わない失意を抱きながら、帰りの車中にて河上肇の「貧乏物語」に目をやったことを思い出す。
自己矛盾を解きほぐす確固たる信念も情熱すら持ち合わすことのない青二才分際には難解なる論理構成に梃子摺り十分な咀嚼がなされたとは毛頭言えなかったのである。
癒されるものは何もないまま京都の安下宿へと重い足を運んだ。
 出町柳赤ちょうちんの屋台で濁酒の味を覚えたのは丁度このころであった。