老いぼれの居合稽古《10》

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その10
先日の金曜日に風邪気味を押して「ふれあい」に入ったが気力萎え志気消沈したまま抜かずじまいに終わった。
敵地に臨み体調不良を口実に勝負を忌避することは武士道の教えに反する。
有るまじき卑劣行為と心得て、せめて『前』
一本目だけでも男の意地でやり抜こうとしたが駄目だった。
どうしても抜けない。
体の節々が痛く力の伝達径路がずたずたで成り立たない。
熱こそなかったはずだが頭痛と喉の痛みに悩まされた。
刀禮し帯刀姿勢に入ったままその姿勢で坐りつづけた。
座禅を組む意欲も湧かなかった。
半跏趺座の姿勢を意識しただけで関節が拒否した。
半眼、眼下に目を注ぎ耐えた。
ソフトテニスに興ずるいつもの甲高き嬌声と哄笑は館内に響き渡る。
決して閑静なる雰囲気とその環境とは縁遠き中ではあったが終始「数息観」を意識して気息を整え「無心」の境地を模索しつづけた。
所詮、無理は承知の上で意地を張った。
愚かなりし事とは自認しながら猶もつづけ通した。
卓球に打ち込まれる板宮ご夫妻の延々とつづくラリーのようすを羨望の念を交えて聴き惚れたりもした。
猛烈なる雑念と煩悩の数々が去来したのでした。
相当の時間の経過で、最早足のしびれの域からは脱却していた。
充足感に納得したので正座の行を終えることにした。
館内の時計の針は丁度四十分の経過を示していた。
一炷 (いっしゅ )と言い表わすらしい。
正座・黙想に正味40分、心持ちからだが軽くなった気がした。