老いぼれの独り言

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此の拙い絵は昭和34年(1959年)に赴任した菊水町で描きました。
内川を渡り川向こうの土手から下田のじろしちさん宅をとらえたものです。
生前に此の絵を“みよ子”に見せて上げたかった。
今や帰らぬ人となってしまったあの子の病床で此の絵を見せて生まれ故郷の我が家のことを思い出させてあげたかった。
わたしは昭和34年に初任地菊水の地で十名を数える彼らと初対面を果たした。
本当に穢れを知らない純真無垢なつぶらな瞳でわたしを見上げて呉れた。
うらなりのような半人前の此のわたしを彼らは快く温かく迎え入れてくれた。
あの時に菊水の山で出逢った彼らは此の齢になっても昔の儘で何にも変わってはいない。
昨年の夏のとある日に彼らとの再会を菊水の校舎跡地で果たしたのです。
その折の元気そうな“みよ子”の姿からして信じ難い出来事なのです。
突然の病魔があの子の命を奪っていった。
儚き命は露と消え去りました。
菊水町所縁の常徳寺ご住職の懇ろな読経の音がなぜか知らぬがなみだを誘った。
 
何より辛いのはあの時数えたはずの拾の人数が今や半減して五になってしまったではないか。
先に逝って待っててくれるのなら、いずれはわたしも参ります。
その折には昔と変わらぬ人懐っこい温かい目で迎え入れてください。