老いのひとこと

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こういうことを灯台下暗しと云うのでしょうか。
 我が家の目と鼻の先に「珠洲焼」ギャラリーを発見したのです。
 かつて愛犬りりーが生存中は足繁く此の一帯を共に歩いた。
 くすりのアオキと兼六セレモニーホールの並びにいつの間にか洒落た美容室が開店しているではありませんか。
 それとなく目を注げば接客中の店内の横手にこぢんまりとした画廊が添えてある。
 ガラス越しに覗えば陶器の類いが十点あまり品よく安置されている。
 陶芸の世界には縁なき存在ではあったが目下の処は陶芸教室に通う身には違いはない。
 これは捨て置けないとよくよく見れば解からぬなりに「珠洲焼」だろうと直感した。
 いずれも、どっしりした重厚な質量感にあふれる。
 五彩の色調はどこにもない。
 どす黒く淀んだような異様な風格だけがただよう。
 一言断わって中を見せていただいた。
 やはり、「珠洲焼」作家でいられる中山達磨氏の作品でした。
 当然のことながらご本人は窯元珠洲の正院飯塚に居られ不在とのことでした。
 一時には隆盛を極めた「珠洲焼」が室町末期の頃に忽然と姿を消し廃絶されたまま忘れ去られたものを昭和五十年代頃に復興の兆しをみて瞬く間に脚光を浴び今日の第二隆盛期を迎えたのだとおっしゃる。
 この中山氏も復興にご尽力なされたお方だと説明なされていた。
 珠洲特産の鉄分を多く含有する粘土が決め手で釉薬などは掛けることなく窯に焚く薪の灰分が熔けて天然の釉薬となるらしい。
 また、焼成寸前に窯の焚口と煙突部を密閉に酸欠状態に置くと鉄分が酸化しあの一種独特の渋い灰黒色が生ずるとのこと、興味は尽きることがありません。
物凄く好いお勉強になりました。
 是非、歩けるうちに「珠洲焼」を実地検分いたさねばならんとその時思った。