廻り稽古
１２月２３日は市連稽古納めの日、せめてこの日ぐらいは県立武道館の道場の床を踏まねばならないと肝に銘じた
剣道を手懐けている以上その証しにと老骨に鞭打った次第だ。
ひょっとして今年こそが今生のお別れのラストチャンスに為り兼ねない、そんな思いに追い立てられもした。
上座下座を問わず防具を置く場所が見当たらいくらいもの凄く盛況だ。
敷居の外の手摺りのかげに漸く坐す位置を確保できた。
其処はかわいい小学生たちの末席と云って良い。
太鼓の合図で皆一斉に懸かっていくが元太刀の先生方に長蛇の列が延びる。
中高生が矢鱈と多い、まさか割り込み行為など出来ようはずがない。
上座の方は高段者が主流ではあったが厚かましくも小松の林先生にお相手願った。
誠意を尽くし身一杯精一杯の思いで掛かって行った。
前へ出る突進力はもうない、手足バラバラは見苦しい限り何はともあれ気剣体一致だけを心掛けた次第なのです。
わたしの軽い正面打ちを捉えて林先生は「一本頂きました」と深々と一礼なされた。
これには、流石に見上げた挙動だと大いに感服させられたのです。
次いで、名にし負う北野先生にお願い申した。
予てより一度は直接の手解きをいただきたく存じ上げていた先生だったので晴れて念願かない無上の喜び一入だったのです。
これこそが正真正銘の「一期一会」の心境で無心に掛かっていった。
まるで子どものように無心で掛かってゆきました。
そんなに長い時間ではなかったが「よく頑張ったね」と抱きかかえるように背中を叩かれたのでした。
まるで子どものように剣道をやって来てよかったとその時に沸々と実感が湧いたのです。
