老いのひとこと

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ご近所の表具屋さんに「梅室」についてお尋ねしたら県立美術館の窓口で願い出れば担当の学芸員が懇切丁寧に対応して頂けるやに好い話をお聞きした。


早速、照会いたしますれば確かに嘗てはそのような指導体制は取ってはいたが現在はやってはいないという。


鑑定に関わるトラブルが多発し敬遠したのだという。


代わりに下近江町にある金沢美術クラブなる機関の紹介を受けた。


ところが、こちらへ連絡いたせば案の定呈よく辞退の弁、やはり金銭的トラブルを極端に忌み嫌っているようだ。


邪悪な売買益を虎視眈々と狙う輩に見立てられ些か心外ではあった。


世知辛い世相を反映した現実の娑婆の断面を見せ付けられわたしの心中は穏やかではなかったのです。


最終的には尾張町のとある古美術商のお名前を教えて頂いたのです。


夕刻に参上いたしますれば、そのお方は暫しまじまじと目を注ぎ開口一番此れは贋物ではありませんと明言為された。


間違いなく本物の「梅室」の作であることを保証するというのです。


お蔭で今日一日のもやもや感が一瞬にして吹き飛んだのです。


ただ、そのお方は気風の好い商人(あきんど)らしく余りにも保管状態が劣悪だったので本体は著しく焼け爛れている、もはや商品価値は無いに等しいですよ念を押されたのです。


それであってもわたしにすれば此れ以上の収穫はない。


大いに満足し得心を得たのでした。


もちろんそのお方は鑑定料金は頭から辞退為されたのです。


確かに気風の好いお方でありました。


我があばら屋には全く相応しくはない、「櫻井梅室」筆の芭蕉の句が家宝として愛蔵されることになりました。


巷間伝え聞くところによれば骨董品への損害保険があって掛け捨て1000円で三万円の補償があるという。


そんなものはわたしには関係がないのです。


因みに、梅室は江戸末期の金沢生まれの俳人であるという。


刀の研ぎ師でもあったのだという。