老いのひとこと

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此れは「陶板による表札」の完成時のイメージを先取りした写真です。


 目下、鋭意制作中なのだが少々奇抜な構想に我ながらしてやったりとほくそ笑むのです。


 例の野田山で倒壊した上溝桜の大木を処理した折にそっと隠匿しておいた切れ端の活用を思い立ったわけだ。


 天然木の木片に陶板を埋め込んで木材と陶器の夫々の特性をミックスさせて相乗効果を狙ってみたのです。


 他人様の評価はどうでもよいのです、おのれが得心できればそれで良いのです。


 処が意外だったことは自然乾燥させた上溝桜の素材の手強い事その硬さには魂消てしまったのです。


 包丁一本晒に巻いての歌の文句ではないがわたしは(のみ)を一本片手に握り木槌で叩くを生業(なりわい)として突然木彫師に早変わりしてしまったのです。


 処が手持ちの敲き鑿はたったの一本しかない、おまけにその刃はのこぎりの歯のようで真っ赤に錆びている。


 上溝桜は高級木彫材の名の通り木目が緻密で怖ろしく硬いので全く歯が立たないではないか。


 それでもわたしは運慶か円空に成り済まし一心不乱に彫り続けた。


 何事にもコツがあろう、力ではなく技があるはずだ、そうおのれに云い聞かせながら無心に彫り続けた。


 雨だれ石を穿つというではないか根気と忍耐力との勝負に違いなかろうとひたすら我を張るのです。