老いのひとこと

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余りにもお天気が好すぎるのでついふらふらと足は春浅き額谷へと向かっていた。


でも山菜にはまだ早く何んにもあるはずもない。


オシダの芽がとぐろを捲いているが不気味な産毛に被われている。


コゴミでは在るまいしどうしようもあるまい。


お天気だけは申し分がなかったのだが此の先にもっと不浄なものが待っていたのでした。


こんなはずではなかった。


こんなところへ来なければよかった。


透き渡った気分は千千に砕け散ってしまった。


最も忌まわしき寝具の不法投棄現場を見てしまったのだ。


這う這うの体で逃げ帰らざるを得まい。


目を瞑り息を止め鼻をつまみて一目散に逃げ帰らざるを得なかった。


ところがどうしたことか運命の神は千載一遇の幸運を此のわたくしに惜しげもなく授け給うたことになる。


道端に黒き物体が転がる。


見れば間違いなく岩石である。


あたかも木炭のように見えるがずっしり重い。


石炭のようにも覗えるが石炭では絶対あり得ない。


わたしはその足で県立自然史資料館へ直行し教えを乞うたのです。


係官は一瞥するなり「珪化木」ですと噛んで含めるようにすんなり説明してくださった。


凡そ50万年昔に自生していたブナの木かタブの木が地層の中に埋没し圧縮され変形して周りの二酸化珪素を吸収し石のように化けた樹木なのだという。


恐らく、卯辰山層という新生代の地層で生成されたのでしょうととてもご親切ではあったが予備知識の乏しいわたしにはやはり難解すぎました。


道端に転がるのを全部採集に家に持ち帰りました。


未だ木質部を残す部分もあるが一様に真っ黒だ、よく見れば瑪瑙の塊もあるではないか。


本日の額谷散策は大正解であったと云えましょう。


願ってもない貴重な植物化石にお目に掛かり収穫大で本当に来てよかったと思った。