老いのひとこと

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馬鹿でかい硯屛が漸くにして仕上がったまではよかったがまたまた騒動を仕出かしてしまった。


確かに素焼きの段階までは両の脚を大地に確と根を下ろしキリッと真っ直ぐに立ちはだかっていたはずだ。


ところが窯の中で表面裏面に不均等な熱量を照射されたばかりに少々腰が曲がってしまった。


いくら障害があれ我が子ゆえ可愛い、両脚にマメが付いたままだったのでハンマーで打ち砕こうとした矢先に見知らぬお方からお声が掛かり私に任せなさいと言わんばかりに電気ドリルで切断を試みてくださったのです。


ご親切なお方のご好意に感謝の意を述べようとしたその瞬間、異様な音に振り向けばああ無常、此の有様だったのであります。


驚いたのはわたくしよりもその御方でした。


善意の行為が無に帰した不覚の念が無念の表情となって此のわたくしには諸に伝わってきたのです。


許すも許さぬもない返って気まずい思いだけをさせて申し訳ないと宥めるしかない。


後刻、その御方はこれにてもう一度硯屛を作り直してくださいと大きな粘土袋を差し出されるではないか。


固く辞退申したが聞き入れてもらえずとうとうその御方から本日二つ目のご好意をかたじけなくも頂戴いたした次第なのです。


鶴鋒会所属の御方だが肝心のお名前をお聞きするのを失念している。


此のご時世には珍しく律儀な御方に接しわたしは此の上なく嬉しい。


返礼に珪化木の破片を少々と額四峠の自家製粘土を


贈ることにした。


 


 


例によって陶器用接着ボンドで繋ぎ合わせるではないか。


何とも子どものようにわらびしい。


 

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