春先に手掛けた偏壷が今漸くにして焼き上がった。
「青萩」を手動噴霧器で吹き付けただけで殊更手の込んだ技巧は何ら施してはいない。
ところが思いがけずも予期せぬ文様が浮かび上がった。
あたかも稲妻が奔るような不思議な曲線が描き出されたのです。
決して意図的な作為の仕業ではない。
ただ稲妻にしたらその閃光に全く勢いがない、むしろミミズがへばり付いているようにさえ見えて仕方がない。
しかし、偶然が為せる芸、自然が綾なす模様に一人悦に入る。
美酒酌んで酒器によし花器として手折りし野の花活けてよし飾り気無しの素朴さよし。