老いのひとこと

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迷走台風が停滞した此の二三日間には急に秋が来たような気がした。


ふと、しんみりした心境が手伝い何気なく茶香炉を取り出していた。


自作の得難き作品です。


もう一度作ってみろと云われても最早その気力さえ湧いてこない。


その意味ではわたし自身に取っては貴重な遺作のようなものになる。


義母から貰った香炉は幾つかあるが元より香を嗜むような分際ではない。


焚き方も知らぬし他人から教えてもらったこともなし其の気にもならない。


物の書物には香は齅ぐものではなく聞くものであると書いていた。


そんな洒落たことは此の野暮ったい朴訥には通用。するはずがない。


精々がお墓参りの時か蚊取り線香ぐらいだ。


その程度の者がそもそも茶香炉に手を出し作陶するに及んだこと自体不思議でならない。


 


茶葉なら何でもよい、煎茶でよしほうじ茶ならなおよし。


ローソクの火が近すぎれば直ぐ焦げるし煤で真っ黒に汚れます。


逆に遠すぎれば火力よわし、その按配加減が難しい。


和かい茶の香りが漂えば、心安らぎ何となく心落ち着き、揺ったりとした寛ぎ感が堪らなく好い。


そよ風すら嫌う。


火柱は一点集中が好い。


真上に一直線になればいい。


気持ちも揺らがないように一点集中が好い。