老いのひとこと

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世の中にはご奇特なお方がいるものです。


世話になった母校の校歌を今以って覚えていられる取り分け小学校の歌詞も旋律までもがちゃんとスムーズに出てくるお方にはシャッポを脱ぎます。


母校への愛着心はないわけではないがそんな芸当はわたしには出来ない。


それがどうした事か母校の校歌を歌う機会に出くわしたのです。


云うところの同窓会に出てみたわけです。


例外もあるがどちらと云えばわたしは同窓会をあまり好まない。


みな自分の勲章を持ち寄って見せびらかすような場に過ぎないからだ。


わたしには他人様に見せるような勲章は一つも持ち合わせがないのでそんな肩身の狭い所へは行きたくはない、これが本音です。


それがどうした事かどういう風の吹き回しか60年振りに母校の校歌を歌ってしまった。


声を限りに在らん気力を振り絞って歌った。


歌いながらひしひしと昔のことを思い返した。


おんぼろ自転車にリアカーを曳きながら二回も下宿先を独力で引っ越した。


此の厳粛なる二回にわたる実体験でわたしは自立することの大切さを確と自覚し、その事を体得した。


わたしに此の自立心を育んでくれたわが母校に熱き感謝の念を込めて必死に蛮声を腹の底から絞り出した。


60年前に甦り青春の頃に立ち返り応援歌も歌った。


いつの間にかスクラムの輪の中にわたしも身を投じ


肩をゆすり大きなうねりに身を任せていた。


地酒の美酒にも後ろ押しされ誰彼となくアンコールのアピールが大合唱と化し再度応援歌を高らかに斉唱したのです。


憚りもなく感涙に咽び頬を濡らす。


此の日は誰一人として勲章をちらつかせるものはいなかった。