文字列不揃い修復かなわず
富
岡鉄斎を尋ねて清荒神清澄寺へ参った折に資料館
にて素晴らしい秀作にお目に掛かれた。
郷土の大樋長左衛門らの作品にまじって荒川豊蔵作
の黄瀬戸六角酒盃が何故かしら目に止まった。
素人なりに魅せられてしまった、いや素人の目をも
引き付ける魔力をさすが人間国宝なるがゆえに宿す
ことを知らされた。
何時かは来るであろうチャンスを秘かに覗っていた。
作陶の気持ちが持ち上がるのを待って取り掛かるが
一作目は物の見事に大失敗、満を持して二作目に挑
み此の際ようやくにして焼き上がった。
我ながらまずまずの出来具合ではないか。
又しても例の如く人聞きの悪い言葉で以ってお茶を
濁さざるを得ないのです。
黄瀬戸を模すと云っても粘土がないので素焼きの時
点で黄色の色化粧土に微量の弁柄色を混ぜて全面に
塗り手繰った。
透明釉だったので塗った筆の跡が微妙な模様を綾な
してくれた。
まあまあ、その程度のことにすぎぬのだが思いの外
渋い趣きを醸し出しているではないか。
どなたからも何の評価も戴かなくても大いに結構、
何時ものように自画自賛し悦に入り正月には此の大
型六角盃にて祝盃を呑み乾すことを本望と致すとこ
ろなのです。