老いのひとこと

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滝川先生の絵は昭和二十一年六月とある。


敗戦の爪痕まだ荒々しく残る状況下、戦前の価値観が喪失し戦後の価値観が新たに創出するまさに混乱の真っ只中ゆえ少なからず先生の心中にも複雑な想いが去来したのでありましょう。


想い定まらず重なり合って揺れ動いた胸中を梅雨空の雲の動きに託して物の見事に描写尽くされている。


精製水とエタノールで洗浄作業を施すにつれ絵描きさんの絵筆のタッチがこちらに伝わってくる。


混沌とした世相を梅雨空になびく夏雲になぞらえ刻一刻と変化する動きを画筆に託した。


青空とて澄み切ってはいない晴れ晴れとはしていない。


何処となく遠慮がちに晴れ渡る、晴れてはいけないのに晴れているように映る。


微妙にして複雑に浮動する雲の動きをものの見事に描き切っている。


さすが一水会の大家の筆遣いだと色弱の絵知らずがずけずけと物申す。


色判らずしてベイジュ色のような肌色のような土色のような複雑な色合いの雲がある。


色弱なりによく判る。


元に復元するは敵わないが懸命に先生の意に添うように遣り遂げましよう。