不言実行、即行動あるのみ。
高橋川馬替下橋の欄干より見下ろす水面に若鮎の銀鱗が躍る。
遠き昔に返り、子供のころに返り川の水と戯れてみたい衝動に駆られるがおいそれとそんな分けには行くまいぞ。
でも、とうとう我慢し切れずにと或るべた凪の日の夕刻を見計らいわたしは橋桁より釣り竿を投げ入れていた。
斷捨離することなく愛蔵した甲斐があった。
むかし愛用した釣り具一式が辛うじて残っていたではないか。
加賀竿を引っ張り出すまでもない渓流竿で間に合った。
錆びることもなく加賀毛針も見つかった。
たったの一度きりではあったが竿先にぐぐっと魚信が走ってくれた。
釣れなくてもそれだけで十分に満足した。
見えるお魚は釣れませんというジンクス通りだなあとつくづく感心した。
高橋川も袂で同姓のわたくしは奇しくも遊び戯れるのです。
素晴らしい冥途への土産話しとなるのです。