秋二題
盛夏の頃にはその気配一向に見せずに今年は駄目かと落胆し掛けたのだが此処に来て異変が生じたようなのです。
きっと此の家の主に似て気難しがり屋であったのでしょうか。
それとも遅咲きの晩成タイプに属したのでしょうか。
此の朝顔は決して種を宿すことを知らないという。
種族保存本能とは縁がなさそうだ
だがら一世一代の我が生命をつつましやかに華と咲かせているのでしょう。
そういえば花芽らしきものが続々とお出ましのようだ。
心置きなく此の世の秋を謳歌しなさい。
*背戸の片隅にふと目をやれば蝶の幼虫らしき生物が数匹寄り添うようにうずくまりたむろする。
黒地に黄緑色の鮮やかな斑点模様が幾何学的に整然と配置される。
もう脱皮をし終え蛹に変身する直前の幼虫なのだろうか五六センチは在ろう。
余りにも美しいので薄気味悪く怖くもある。
ふと颯人くんを想った。