刃物を研ぐ砥石とはまったく縁のない人間だった。
それが又どうしたものか恭しく砥石の原石を飾り立てて悦に入る。
墓石の端くれが意外にも砥石の原石として活き返ったのです。
石材屋さんが云われるには京都亀岡産の凝灰岩で物によっては大した値打ち物になるとおっしゃる。
カッターによる切断面はベージュ色した実に滑らかな手触りである。
此の砥石で刀ではなく鑿を研ぎたい。
研がねばならない急がねばならない。
上溝桜の丸太ん棒が首を長くして待っている。
仏像らしきものを浮き彫り致さねば男が廃る。
砥石とは無縁の者だったが砥石が取り持つ縁で色んな方々との人間関係の絆の糸が複雑に絡み合いわたしの人生に彩りを添えて戴いたことを有り難く感謝致さねばなりません。