老いのひとこと

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古い背広よさようなら


はかない夢よさようなら


むかし口遊んだ歌の文句だがわたしは古臭い新規性の乏しい野暮なので大昔の古い背広を今以って時折り思い出したように羽織って着るのです。


時代遅れの無骨さには我ながら呆れ果てる。


就職祝いに親爺が誂えて呉れた思い出の品をそう容易く手放すわけには行かない。


況してや素材は破格の高級ウールでずっしり重い、型こそ古いがわたしの青春そのものです。


何んと云ってもズボンの前開きファスナーはなく


四つのボタンで留める博物館行きの代物だ。


何を思ったかそれを着込みコロンボ気取りでコートを引っかけ香林坊のネオン街へ飛び出した。


平気の平チャラ好い気になって革靴踏んでよたよた闊歩する。


 


学卒時の校友の集いに顔をだし久し振りに蛮声張り上げ校歌を唄い憂さ晴らす。


旧知を温め合いながら盃を重ねる。


其の折、物を見るときには一面的ではなく多面的多角的にしかも上下左右に反転させて見れば別世界が展開され視界に入ってくると云う大変面白い意義深いお話を伺ったのです。


酩酊した所為か夜の繁華街が別世界のように歪みながらも美しく見えた。