老いのひとこと

イメージ 1
無断掲載



日本人でありながら能や歌舞伎には素養のない味気なき人間です。


偶々何の気なしにチャンネルを回せば能を演じていた。


 


ただ能面の形相が只者ではない。


打ちひしがれた老婆が悲しげな表情でうらぶれた姿で悄然とたたずむ。


しょぼくれた空ろな目、しがない目ながら眼球だけが異様に生きている。


表情がその都度動くまさに見事に生きている。


此れは只者ではないと思った。


舞台に吸い付いた両足が静々と引き摺るように動くが老躯の五体は微動だにしない。


目の表情だけで心の動きを極限まで追及している。


大鼓と小鼓に笛の音色がこころに沁み渡る。


観る者のこころが動かないはずがない。


 


大した役者さんだ。


テレビの番組欄を見れば人間国宝友枝昭世」の卒都婆小町とある。


小野小町を題材に原作が観阿弥世阿弥が脚色した超大作を人間国宝たる能役者が演ずる。


百歳の老婆小町がむかしを回顧しながら劇的わが人生の遍歴をたどる。


「百夜通い」のロマンを悔悟しながら狂乱しながらも終には仏の世界に身を置き幕が下りる。


難しいセリフも手伝い戸惑う場面も多々あったが大筋で何んとか大意は掴められてほっとした。


判らぬなりに大きな感動を戴きました。


日本人であってよかったとつくづくそう思った。


 


翌日NHKへ再放送の予定を問い質したが良い回答は得られなかった。


とても残念です。