老いの回想記≪136≫

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その八  ブーメラン 返る内川 春いずこ


 


赴任四年目の平成三年には市の中学校社会科部会での研究発表校に指定された。


当時は社会部は存在しないので生徒たちに呼び掛けてみれば山下幸子と若村啓子の両名が率先して潔く名乗り出てくれた。


テーマーは自ずと絞られた。


山下幸子の家は近郊農家で特異な稲作農家としても知られていた。


無農薬有機米を篤志家と契約栽培されている由、知るに到ればその時点で幸ちゃんのお父さんの胸に飛び付くしかなかった。


山下氏は著名なる篤農家であられた。


氏は実の娘であることを恰も忘れたように篤き熱弁で応じてくださった。


時間を忘れて環境問題を含めた自身の農業哲学を熱心に説明為された。


アイガモの効用については殊のほか興味を注いだ。


取材する私たちにとっては意義ある充実感あふれる夏休みでした。


二学期を目前に『自然農法による有機栽培について』と題した研究収録がまとまった。


何といっても気の合った二人の功績は大きかった。


リハーサルを兼ねた全校集会で小手調べをした後本番の社会科研究発表会にて臆することなく堂々の披露に到った。


文教会館大ホールにて聴衆の大喝采を博した。


のみならず見事に岡文化賞受賞の栄誉に預かった。


野上正市中文連会長より絶賛された。


辛辣なる評論家であられた野上先生よりお褒めの言葉を頂戴したことはやはり特筆に値することなのです。