フェースガードを付ければ視界のみならず
下界と遮断された或る種の窒息感を覚えざるを得ない。
命を賭した真実の立ち合いに際しても恐らくはこの様な感覚の下に置かれるのかも知れない。
無防備な状況下に置かれ我が体は全て敵に任す。
敵の好むように我が体を晒して打たせる。
自我とか勝負への執着心をかなぐり捨てて
捨身の心境を此の時はじめて会得する。
そうすれば迷いや曇りのない明鏡止水の鏡のような心が生ずる。
此の鏡のような心に敵の心と敵の技が映し出される。
此の研ぎ澄まされた心で以って敵の心を打つ、心で相手の心を打つ。
山岡鉄舟先生の説く一刀正傳無刀流の要諦が此処にあり。
素晴らしいではないか。
ウイルスほどの身幅でよい、此のわたしとて此の要諦の一千万分の一をば学ばん、そして近寄らん。
息苦しきガード付き面を被り我れ剣の道に一層精進いたさん。