老いのひとこと

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皆さん方の畑の敷地のど真ん中に一本の姫リンゴの木がある。

持ち主は不明だとみなは云う。

もはや野生化した姿で自活し秋には小さな果実を実らせるが誰からも顧みられる事はなかった。

去年の晩秋のころわたしは喜び勇んで幾何かを摘み取り姫林檎酒に仕立てた次第だ。

りんごの花ほころぶのは今少し先のようだが新緑が今年も萌えいずる。

ふと覗えばちょいとした異変に気付く。

幹の一本が見事に折れている。

ところがどうしたことか若芽が吹き出し生きている。

枯死するはずの枝にも若い命が宿っているではないか。

しげしげ観察いたせば間違いなく真っ二つに折れ裂かれてはいるものの辛うじて樹皮一枚を残して繫がっているのだ。

樹液が此の奇跡のパイプを伝って流れていたのです。

首の皮一枚で命を長らえている神々しい光景が目に入ったのです。

偉大なる自然界の生命の摂理を目の当たりにし無類の感動を受けた。

 

本来なら然るべき樹医に委嘱いたさねばならぬところだがそっと支柱を添えることに致しましょう。