野田山の芝山の地の一角に漂う津田家の霊気が此の世から消え失せてもう久しい。
ただ巧いことに其の残滓を今に留める残痕を奇しくも我が手許に宿すのです。
母方の近吾ひいじい様が早世した我が嬰児を葬ったと思しき甕を土中より見出したのも遂先日のように想い返す。
其の折には恐る恐る遺骨らしき物体に遭遇する覚悟で事に当たったが甕の中ではまさに土に帰ってしまっていた。
その時、奇しくも甕の中に生きるか弱き生命体を発見した。
それを「近吾の木」と命名した。
見てください、今や斯くも若々しい幼木に育ってくれたではないか。
大きめの鉢に植え替えてやりました。
此の「近吾の木」には近吾の霊魂が今以って生々しく脈打つのです。