2021-08-16 老いのひとこと 現役を降りて間もない頃、窪地内の市有地を借り受け少しばかり営んだ。 其の折に収穫したヒョウタンが天井裏からヒョッイと出てきた。 参拾余年が過ぎたので白カビ黒カビに被われ如何にも枯淡の味がする。 日光 浴をさせながらカビ落としを試みる内に ふと清兵衛少年に肖り此の齢老いし鈍兵衛も 日ごと時を忘れ一心不乱に研きつづけん事をこころに誓った。 先ずはカビを一掃しなくてはなるまい。 目の細かいサウンドペーパーを掛け雑巾で乾拭きを致そう。 けばけばしい絵の具や染料・ニスの類は性に合わない。 飽くまでも清兵衛少年に肖り米糠で磨こう。 幸い此のわたしには憎々しい学校の教師も頑固オヤジの厳父ももう居ない。 心ゆくまで自由奔放に勝手気ままに時を忘れて没我の境地に浸ってみよう。 馴染みの骨董屋もわたしには縁がない。 誰に魅せるわけでもない、媚びるわけでもない。 自慢の作が出て来れば玄関先にほんの暫し安置しやがては共に燃していただきましょう。