老いのひとこと⑫

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あるじ亡き無人の館、いや其の廃墟すら既に取り壊し空しき更地と化した。

此の亡霊に惹かれて野田山へと足は引き寄せられた。

早春の無人の墓地ながら此処は恰好の桜の名所でヤマザクラエドヒガンザクラがまさに今は丁度散り初めのはしりであった。

音もなくひらひらとまるで小蝶が舞うがごとくに事も無げに安らかに着地を終える。

見る者に安らぎと安堵を届ける。

余も肖りたい、余もそう在ってと暫しの一時願を込めた。

軟らかい大地の褥に身を置き深い眠りに付きたいものだと願いを込めた。

清三郎と鉚と近吾の親子を見下ろしたあの上溝桜は見事に生命を繋ぎ新芽が萌えいずる。

此の津田家の精霊が蘇り恰も乗り移ったかのように一体の石仏がある。

あらためて手を合わせ礼拝する。