老いのひとこと㊵

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他人の家の墓仕舞いについてとやかく口を挿む筋合いにはない事ぐらいよくよく承知はいたすものの、やはり気になる。

津田家の長(おさ)が決断しそれを断行されたことにわたし如きものが他言いたすは確かに烏滸がましい限りだが、やはり慙愧に堪えない。

住職さんの話によれば墓を始末する折に背後に位置する二基の五輪の塔は当家とは無縁のものゆえ其のままにしますと立ち合った当事者が証言したという。

斯くして難を免れた事は結果的に了といたさねばならない。

半山の墓は近三が建立した。

此の二基の五輪の塔は推測の域を出ないが或いはひょいとして近吾が父清三郎と母鉚の供養を願って建立いたせしものかも知れない。

否そうではなく、近吾は父清三郎と祖父金太郎を慮ったのではあるまいか。

何ゆえならば此の当家の過去帳には日蓮宗徒として金太郎、清三郎、鉚の名前が記載されながらも此の妙典寺には墓がない。

此の妙典寺の寺領に墓を立てられない何か格別の事由が在ったに違いない。

例えば近三と近吾との何かしら対立、確執があったのか。

或いは本家と分家との関係に何かしらあったのだろうか。

若しくは金太郎、清三郎父子と妙典寺との間柄に何かしらトラブルが生じたのであろうか。

つまり金太郎と清三郎を野田山に葬らざるを得ない何かしら格別の事由が生じたのであろうか。

謎は解ける筈もなかろうが若しや此の二基の五輪の塔が金太郎と清三郎に関わるものならば勿怪の幸いでありまさに不幸中の幸いの一言だと云えまいか。

願わくば歴博の北先生にコンタクトを取り半山の墓と併せて此の二基の五輪の塔の去就について是非ご相談に与かりたいものだ。